1.色が正しく見える環境にいない
まず、色のトラブルの根本的な原因としてあげられるのがこれです。 色というのは、光そのものですからその場の光環境で色の見え方は全然違います。 そして光というのはとても複雑で、同じに見える光であっても、 実は、違うという場合が多いのです。 どんなことに気をつけて光環境を作るのかをここでは簡単に説明します。
(1) 光によって何が違うのか
例えば、同じ白い紙を 白熱電球の部屋で見るのと、青白い蛍光灯の部屋で見るのでは 見え方が違いますね。
人間には、色順応と言って光環境の違いを補正する機能が備わっているので、 どちらも白いと感じることはできますが、 正確に色を捉えることには無理があります。
そもそも、照明をはじめとする光の色は、 光の成分によって決まります。 簡単に言うと虹の7色のバランスです。 (本当はもっと沢山の色が含まれていますが) 見た目で同じ色に見えたとしても、成分が違うことがあります。
ですから、単純に見た目の光の色みが同じだからといって、同じ光環境に いるという判断もできません。 あくまでも大事なのは光の成分です。
(2) 正確な色を見るのに必要な光とは
先ほど書いたように、大切なのは見た目の色みではなく、 光の成分です。 虹の7色が均等に含まれている光の下では、 色を正しく見ることができます。 そして、その条件を最も満たすのが太陽光です。
では太陽光で物を見ればいいのかというと、その答えは100点満点ではありません。 太陽の光も、天気や時間帯、地域(緯度)によって変わるからです。
ですから、色を見るための光(標準光)には 『北半球における北空からの自然昼光であって、通常、日の出3時間後から日の入り3時間前までの太陽光の直射を避けた天空光』という定義があります。 ただ、これを満足する条件でしか色を見れないとなると、仕事になりません。 また時間帯が同じであっても、天気が違えば自然光は変わります。 雨の日は色を見れないというのでは話になりません。
ということは安定性と言う面で現実的な標準光は?と考えると、 人工の照明を使ったことがいいことになります。 ただし、できるだけ標準の光(自然光)に成分が近い人工の照明です。
そして、照明を選ぶ際に、 どれだけ色を正確に見ることができるかという目安となるのが "平均演色評価数(Ra)"というもの、 100に近いものが標準光に近いと考えてください。
私たちは、パーソナルカラー診断は当然のこと、 色見本を見たり、パソコンで作業する場合は 必ず、このRaが100に限りなく近い、色評価用の光で色を見ています。 もちろん、カラーリストだけではなく、 印刷や塗料、映像の現場などでも、かなり厳密な照明管理の下 色のチェックを行っているはずです。
ですから、色を見る比べるというときには、色評価用の蛍光灯のような、 平均演色評価数が高い光が必要です。 意匠性の面で、様々な照明を使うことはあると思いますが、 トラブルを防ぐには、正しい色が見える光を使うべきです。
ファンデーションを選ぶ光、髪のカラーリングを決める時の光、 服を試着した時に鏡で確かめるときの光、 デザインやプランニングの打ち合わせ現場での光、 適切な光か一度確認してみてはいかがでしょうか。